先日、シドニーの中心部で立てこもり事件が発生しました。

残念ながら容疑者の他に2名の犠牲者が出て、オーストラリアでは連日大きく報道されました。

 

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現場の近くに設けられたエリアは犠牲者のために市民が持ち込んだ花束で埋まっています

参照URL

★容疑者はイスラム教。でも過激派ではない?

容疑者はシドニー在住のイスラム教徒でした。過激派の名前を口に出していたようですが

「過激派の旗を用意しろ」と要求していたり、実際の過激派組織から声明が出ていないことから

実際は過激派に”憧れていた”一般のイスラム教徒だったのでは、と考えられています。

 

当初は「テロ」という言葉を使っていたメディアも、一切使わなくなりました。

 

今のところの見解は、一人の男の単独犯行です。

でも、たまたまイスラム教徒の外国人だった、という事実が、オーストラリア人には衝撃を与えました。

 

★テロの標的になるはずがない、オーストラリアが狙われた?!

オーストラリアというと、人口も少なく、国際的な影響力も(良くも悪くも)小さくて

地理的にもほとんどの国から離れている、平和でどこかのんびりとした国です。

 

東京の電車のように「テロに警戒して〜」なんていうアナウンスも流れませんし

まさかそんなオーストラリアが狙われるなんて、本気で考えていません。

 

そんなところに、「シドニーでテロ!イスラム過激派とみられる!」とニュースが流れたので

オーストラリア人の多くはショックを受けて動揺し、「まさかこの国で?」という反応でした。

 

★メディアに一気に溢れた人種差別の嵐

オーストラリアにも、ごく少数ですが、人種差別的な考えを強く持つ人たちというのはいます。

「自分の国に帰れ!」などと怒鳴りつけたり、差別的な呼ばれ方をしたり、嫌がらせをしてきます。

 

特にイスラム教徒に対しては風当たりが厳しく、ヒジャブ(頭に巻くスカーフ)をしている女性は

一目で判別できるので、標的になりやすいように感じます。

 

このニュースが流れたとき、私が最初に思ったのは

イスラム教徒の友人が街で危険な目に遭うんじゃないか、という不安でした。

 

実際、ニュースサイトのコメント欄やフェイスブック、ツイッターは

あっという間に「反イスラム教」「出て行け」「危険な宗教」などの言葉で溢れました。

 

ずっと燻っていた人種差別の勢いが、ここで爆発してしまうのではないか。

差別的ではなかった一般市民も、その勢いに押されてしまうのではないか。

 

何とも言えない不気味な「世間の目」の変化に、私も不安を感じました。

 

★「私と一緒にバスに乗ろう」#illridewithyouタグが世界トレンドワードに

立てこもり事件が大きく報道される中、

一人の女性がツイッターで#illridewithyouというタグを作りました。

 

I’ll ride with you

一緒に乗るよ

 

という意味です。

 

頭にヒジャブを巻いているイスラム教徒の女性に向けて

「もし今日、一人で電車やバスに乗るのに不安があったら、私と一緒に帰りましょう」

というメッセージでした。

 

この動きが一気に広まって

「私は●時頃、●●番のバス停からバスに乗ります。一緒に乗りたい人はメッセージ送ってください」

というようなつぶやきが、ツイッターに広がりました。

 

その日のうちに#illridewithyouはツイッターの世界的トレンドワードになり

各国のメディアも、「最悪の事態から最善の対策を生み出した」などと紹介していました。

NYTIMESThe GuardianCNN

 

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このillridewithyouのタグは、多くのオーストラリア人の正直な想いを体現していると感じます。

 

自分の国に存在する人種差別のことは良くわかっていて、それが今回の事件で悪化してほしくない。

大規模なことはできないけれど、いつも街で見かけるイスラム教徒の人たちには

今日も明日も安心してオーストラリアで暮らしてほしい。

 

だから、もし不安だったら、一緒にバスに乗りましょう!

 

ちょっと素朴で、気持ちをストレートに行動に移したこのタグ付きのツイートは

オーストラリアに住むイスラム教徒の人たちからも感謝のツイートが返ってきたりと

2日間以上に渡って大きく盛り上がっていました。

 

★オーストラリアの素朴な人柄、人種差別の事実

今回の事件では、オーストラリア人たち自身が脅威に思うほど

人種差別があるのだということが改めて浮き彫りになりました。

 

一方で、「一緒に乗ろう」とさらりと言えてしまうあたり

全体的に人懐っこくてあたたかいオーストラリア人らしいなぁと納得してしまいます。

 

衝撃的で、犠牲者も出てしまった悲しい事件ですが

オーストラリア人の優しさ、暖かさがいつも以上に感じられる、特殊な数日間でした。

 

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